2019/02/06
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カプセル状のオブジェクト?
カプセルっていうのは、その中に何かを入れて密閉してしまうような容れ物のことです。知ってますよね。
ではカプセル化というのは、どういうことなのか?
勘違いしてはいけないのは、オブジェクトを大事にカプセルの中に入れるわけではありません。オブジェクトの構造をカプセル状にしてしまうんです。
カプセル状と言うからには、中に何かを入れて密閉するわけですが、一体何をカプセルの中に大事に密閉しておくのか?それはフィールド(パラメータ)です。
全てのフィールドをprivateにすることで、まるでカプセルで覆われたように外(他のクラス)からフィールドの値を触れないように、というか見えないようにしてしまうわけです。
そして、そのカプセルには棒が刺さっています。その棒は動かすことができます。棒をカプセルの外から動かして、カプセルの中身をごちゃごちゃかき回すことができるような形状です。例えていうなら、耳かきみたいなことです。耳の中は見えないですが、耳かきを使って耳垢にアクセスすることができますよね。
一体、なんの話かというと、そのカプセルに刺さっている耳かきのような棒というのはpublicなメソッドの例えです。カプセルの外側からカプセルに突き刺さっている棒(メソッド)を使うことで、カプセルの中身(フィールド)を操作するわけです。カプセルは強固なのでその棒を使ってしか中身にアクセスできません。
気持ち悪い手書きの絵で申し訳ないのですが、カプセルに棒が刺さっていて操作できるというイメージが分かりますでしょうか。
ゲッターとセッターもこの棒の一つです。フィールドをカプセルで覆って(privateにして)、それぞれのフィールドのゲッター棒とセッター棒を刺して、それぞれのフィールドを見たり、操作したり出来る状態にするのがカプセル化の大原則です。
ゲッター、セッターをつければいいってもんではない
しかし、ただ単に全てのフィールドをprivateにして、全てのフィールドに対してゲッターとセッターを作るだけではカプセル化とは言えません。メソッドを介してしかフィールドを触れない状態にするのは必要条件ではありますが、それで十分ではないのです。
例えば、以下のHumanクラスのmanpukudo(満腹度)というフィールドを見てください。
Human.java
public class Human{
private static int count_Human = 0;
private String name;
private int birthday;
int manpukudo;
// 省略
}
上記ではインスタンスフィールドのmanpukudoにはアクセス修飾子がついていません。アクセス修飾子がついていないということは、アクセス制限はデフォルト状態なので、同一パッケージ内からなら普通にアクセスできる状態ですね。(参考:オブジェクトって何? 〔アクセス修飾子とは〕 〔ゲッターとは〕)
ということは、Humanクラスと同一パッケージ内のHumanTestクラスから、以下のようなことができてしまいます。
HumanTest.java
public class HumanTest{ public static void main(String[] args){ Human human1 = new Human("ノブオ",19770101); human1.manpukudo = 200; human1.manpukudo = 0; } }
有無を言わさず満腹度を200にしたり、0にしたり。まるで胃の中に無理やり手を突っ込んでいるような状態です。こういう無茶な行為を防ぐために、フィールドは全てprivateにして、ゲッターとセッターを作ります。
public class Human{ private static int count_Human = 0; private String name; private int birthday; private int manpukudo; // 省略 public int getManpukudo(){ return this.manpukudo; } public void setManpukudo(int n){ this.manpukudo = n; } }
しかし、そのフィールドに値をセットするだけの単純なセッターを付けてしまうと、
HumanTest.java
public class HumanTest{ public static void main(String[] args){ Human human1 = new Human("ノブオ",19770101); human1.setManpukudo(200); human1.setManpukudo(0); } }
セッターを使って、好き放題胃の中をいっぱいにしたり空っぽにしたりできてしまいます。これではせっかくprivateにして直接フィールドを触れなくしても、結局同じですよね。
先ほどの気持ち悪い絵の、カプセルから突き出ていたのはpublicなメソッドの例えです。ゲッターやセッターもその棒の一つです。棒は刺せばいいってもんじゃありません。大事なのは、どんな機能を持った棒を刺すのか?です。余計な棒を刺したばっかりに、カプセルの中身がぐちゃぐちゃにされてしまっては、カプセルで覆った意味がなくなります。
カプセルにどんな棒を突き刺すべきか??
フィールドの性質によっては単純なセッターをつけない方がいいこともあります。満腹度は、セッターによって数値をセットするのではなく、食べれば増えて、動けば減るようにするべきです。なので、eatメソッドと、walkメソッドと、runメソッドを作りましょう。
Human.java
public class Human{ private static int count_Human = 0; private String name; private int birthday; private int manpukudo; // 省略 public int getManpukudo(){ return this.manpukudo; } public void eat(){ this.manpukudo += 60; } public void walk(){ this.manpukudo -= 10; } public void run(){ this.manpukudo -= 20; } }
これでこのHumanオブジェクトの満腹度は、食べれば60増えて、歩けば10減って、走れば20減るようになりました。セッターはないので、満腹度が変化するのは食べる、歩く、走るのいずれかの行動をとった時に限られます。これなら、いきなり満腹度を200にしたり、0にしたりということは出来なくなりました。この方が現実に即していますよね。
ただし、やろうと思えばこんなこともできます。
HumanTest.java
public class HumanTest{ public static void main(String[] args){ Human human1 = new Human("ノブオ",19770101); human1.run(); human1.run(); human1.run(); human1.run(); human1.run(); human1.run(); human1.run(); } }
そんなに走れるかよ。っていう状態です。これだけ走らされればmanpukudoはマイナスになっていることでしょう。けど満腹度がマイナスってどう考えてもおかしいですよね。胃が空っぽの状態でmanpukudoは0、それ以下に下がらないようにしておくべきです。同じように食べるのも限界がありますよね。manpukudoのMAXは100ということにしておきましょう。
Human.java
public class Human{ private static int count_Human = 0; private String name; private int birthday; private int manpukudo; // 省略 public int getManpukudo(){ return this.manpukudo; } public void eat(){ this.manpukudo += 60; if(this.manpukudo > 100){ this.manpukudo = 100; } } public void walk(){ this.manpukudo -= 10; if(this.manpukudo < 0){ this.manpukudo = 0; } } public void run(){ this.manpukudo -= 20; if(this.manpukudo < 0){ this.manpukudo = 0; } } }
これで、満腹度は絶対に0~100までの中で収まるようになりました。しかししかし、この状態では満腹度はマイナスにはならないものの、0になってもいくらでも走り続けられます。それもおかしいですよね。お腹が空っぽの時は動けないようにするべきだし、お腹がいっぱいの時は食べられないようにするべきです。
Human.java
public class Human{ private static int count_Human = 0; private String name; private int birthday; private int manpukudo; // 省略 public int getManpukudo(){ return this.manpukudo; } public void eat(){ if(this.manpukudo < 100){ this.manpukudo += 60; if(this.manpukudo > 100){ this.manpukudo = 100; } } } public void walk(){ if(this.manpukudo > 0){ this.manpukudo -= 10; if(this.manpukudo < 0){ this.manpukudo = 0; } } } public void run(){ if(this.manpukudo > 0){ this.manpukudo -= 20; if(this.manpukudo < 0){ this.manpukudo = 0; } } } }
if文を使って、manpukudoが100の時は、eat()が呼ばれても何もしないようにしました。また同じように、manpukudoが0の時は、walk()が呼ばれても、run()が呼ばれても、何も起こりません。これで、お腹いっぱいの時は食べろと言われても食べないし、お腹ぺこぺこの時は動けない状態になりました。しかし、例えおなかいっぱいでもeatメソッドを呼ぶことはできるし、その結果、食べたのかそれともお腹いっぱいで食べられなかったのか?は分かり様がありません。そこで、戻り値を使ってこんな風にしてみましょう。
Human.java
public class Human{ private static int count_Human = 0; private String name; private int birthday; private int manpukudo; // 省略 public int getManpukudo(){ return this.manpukudo; } public boolean eat(){ boolean result = false; if(this.manpukudo < 100){ this.manpukudo += 60; if(this.manpukudo > 100){ this.manpukudo = 100; } result = true; } return result; } public boolean walk(){ boolean result = false; if(this.manpukudo > 0){ this.manpukudo -= 10; if(this.manpukudo < 0){ this.manpukudo = 0; } result = true; } return result; } public boolean run(){ boolean result = false; if(this.manpukudo > 0){ this.manpukudo -= 20; if(this.manpukudo < 0){ this.manpukudo = 0; } result = true; } return result; } }
それぞれのメソッドの中でローカル変数boolean resultを宣言してfalseで初期化しています。それぞれのメソッドが呼ばれた際、命令どおりに食べる、歩く、走るというのを実行した場合に限りresultにtrueを代入しています。もし、お腹いっぱいで食べられなかった場合や、お腹ぺこぺこで走れなかった場合はfalseのままです。つまり、boolean変数resultは、命令通り行動できたかどうかを示す値が入っているわけです。そのresultを戻り値としてreturnしています。
こうしておけば、メソッドを呼んだ結果、その通り実行されたかどうかが一目瞭然なので、その戻り値を使っていろんなことが可能になります。
HumanTest.java
public class HumanTest{
public static void main(String[] args){
Human human1 = new Human("ノブオ",19770101);
if(human1.run()){
System.out.println(human1.getName() + "は走った");
}else{
System.out.println(human1.getName() + "は空腹の為、走れなかった");
}
}
}
↑こんな風に、メソッドを呼んだ結果によってif文で分岐させたり、
HumanTest.java
public class HumanTest{
public static void main(String[] args){
Human human1 = new Human("ノブオ",19770101);
boolean result;
do{
result = human1.eat()
}while(result);
}
}
こんな風に、do-while文を使って、お腹いっぱいになるまでeatメソッドを呼び続けたりすることもできます。(けど、これだとmanpukudoが100になってからさらにもう一回eatメソッドを呼んでしまっているので、例としては問題ありです。。)
カプセルのもう一つの意味
とまあ、こういうのは一例ですが、フィールドに変な値が代入されることが絶対ありえないように、メソッドを定義するというのは非常に重要なことです。そして、フィールドをいじるメソッドの定義次第で、そのオブジェクト自体の使い勝手も変わってきます。
「カプセル」と言う言葉には、「中身を守る」というニュアンスだけではなく、「かっちり完成されている」というニュアンスも含まれているんだと思います。つまり、そのクラス(オブジェクト)自体が完成された一つの部品として働くように設計するということこそが「カプセル化」という言葉に含まれている大事なポイントです。
外部との接触点であるpublicなメソッド(カプセルから突き出ている棒)や、またそのクラス内だけで使うprivateなメソッドによって、カプセルの中のフィールドを完璧に操作できる状態になるようにクラスを設計するのが大事です。クラス単体が完璧な設計をしてさえいれば、複数のクラスを作用させて組んだプログラム全体も、完璧な状態になるはずだ。というのがカプセル化というプログラミング手法の目指すところです。
カプセル化はオブジェクト指向の根っこを支える超重要な概念です。外部(ほかのクラス)からフィールドにおかしな値が入れられたり、つじつまの合わない状態にされることが絶対ないように頑丈なカプセルで守られたクラス設計を心がけましょう。
実はちょっと気に入ってるのでもう一度載せておきます。
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コメント
javaを身につけたいとしていくつかサイトをみましたが
どうしても初心者には、概念というか、一歩のしきい値があり
理解しずらいものでした
今回、どうしても必要になり学習することになりましたが
御サイトは、スムースに入って行ける「サイトの構成」と
、それが「考えるところなのか」、「鵜呑みにすることろなのか」が分かりやすく説明されています
そのため、最後まで進めることができ、「もっとない」という気になりました
忘れながらですが、なんとなく概略や進め方に抵抗がなく進められそうです
もう一度見直し、考えながら進め、吸収するようにします
丁寧なサイトを見させていただき、大変助かっています
ありがとうございます
by tsu_k 2013/12/31 16:54
お褒めの言葉、本当に嬉しいです。
お役に立ててよかったよかった。
頑張って下さい。^^
by nobuo@管理人 2014/01/02 21:57
JAVAを学習するにあたり、非常に参考になりました。
一度読むだけでは記憶はできまい、と考え要所をメモしました。
チェックポイントに、すべて大事なことが書いてあることに気付きそこだけをコピーして、見返せるようにしました。
しかし、途中からそれがなくなり非常に惜しいと感じました。
内容などは本当にわかりやすく、とても満足です。できればさらに深く解説していただきたいです。
期待しております。
ありがとうございました。
by けん 2014/03/17 00:43
ありがとうございます。
>しかし、途中からそれがなくなり非常に惜しいと感じました。
しっかり読んで頂いているみたいで嬉しいやら申し訳ないやら・・。
褒められると頑張る方なので、もっとお役に立てるサイトになるように修正していきたいと思います。
コメントありがとうございました。
by nobuo@管理人 2014/03/17 13:22
カブセル化でググって辿り着きました。
丁寧に解説されていて分かりやすかったです(^^)
サイト自体も見やすくて、他の解説も読んでみようと思いました。
by tyga 2014/05/15 17:01
嬉しいお言葉ありがとうございます。
作った甲斐がありました。^^
by nobuo@管理人 2014/05/15 22:56
“ 例えば、以下のHumanクラスのmaupukudo(満腹度)というフィールドを見てください。”
maupukudo -> manpukudo
ですね。
by 通りすがり 2014/05/16 09:48
>通りすがりさん
ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。
by Nobuo@管理人 2014/05/16 22:36
最近御サイトをみつけました。
考えるべきところは考えながら読み進めましたが、わかりやすいため、
理解できることが楽しく、どんどん読み進められました。
読みやすさとわかりやすさの両方を備えた素晴らしいサイトだと思います。
ありがとうございます。
by masamichi 2014/07/07 17:37
>読みやすさとわかりやすさの両方を備えた素晴らしいサイトだと思います。
よくぞこのような素晴らしい褒め言葉を思いついていただきました。(笑)
ありがとうございます。最後まで読んでもらえて嬉しいです。
by Nobuo@管理人 2014/07/07 19:45